五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)

□17-現実逃避とJK
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 アミは渋谷駅に直行した。
 すぐに電車かバスに乗って、渋谷からどっかに避難したかった。

「――ここから先は暴動により規制をしています。こちらから迂回してお通り下さい」

 お巡りさんが二階建ての車みたいなのの、二階から電子機械っぽいメガホンで呼びかけてた。
 アミはメンドクサ!って口元が引きつったけど、素直に指示に従った。

 だけど迂回した方向も人がたくさんいてウザかった。

 歩いてるうちに、空にいるバケモノの事や、さっきの電話の内容、ぷちごじょーさとるの事を思い出す。

「…アミには関係ないもん」

 頭がパンクしそうだったから、ちょっと静かなところに行きたい気分で、だからアミは人気のない方にどんどん歩いて行った。



 人気がなくなっていく道を、アミは地面を睨み付けながらズンズン進んでいく。
 頭の中でグルグルいろんな考えがめぐって、ごちゃごちゃになってた。

――アミには関係ない! アミには関係ない!

 必死にアミはアミに言い聞かせる。

 アミは施設の大人から、施設の外で自分が襲われる時以外、バケモノ退治は絶対にしちゃダメって言われてる。

 なんでかっていうと、ヒーローには担当区域があってそれを侵害すると戦争になるから。
 だから施設に所属するヒーローのアミ達は、施設の中のバケモノしか退治しちゃダメなの。
 
 どうしてヒーロー同士なのに協力しないの? って聞いたら。人間の歴史がそれを証明してるだろって馬鹿にされたけど、意味わかんないよね。

 未知の脅威があったらヒーロー同士手を取り合うなんて、映画の世界じゃ普通の事だよね。
 フィクションだから駄目なの? だったらヒーローなんて設定持って来なければいいじゃん。

 そうアミが言ってみたら、警察とかフィクションでコチョーされてるだろ。
だからヒーローもフィクションでは面白おかしくされてるんだ。って言われた。

――馬鹿だよね。アミ達の方が現実分かってるから! ジジイたちの“ずさん”な設定にアミ達が合わせてあげてるってなんでわかんないかな!?

「……ハァッ」

 考え過ぎと、歩きすぎの疲れからアミは立ち止まって溜息をつく。

 関係ない。アミはこの時代の人じゃないし。ここの担当区域のヒーローでもないもん。
 そうだよ。設定は違うかもしれないけど、この時代にもちゃんと担当区域のヒーローがいるんでしょ? だったら、そいらが倒せばいいだけじゃん!――て、言えたらよかったのになぁ……。

――やっぱり、アミのせいになるのかな?

 アミはどーしても自分の中に責任感ってヤツを感じちゃってた。
 ごじょーさとるについて。

 本来あのバケモノを倒すはずだったごじょーさとるは眠っちゃって、いま渋谷には動けるヒーローがいない。
 それでもって、ごじょーさとると渋谷をそんな状態にした原因は、アミだ。

 アミだってちょっと必死だったし、自己防衛ができてなかったごじょーさとるだって悪いでしょ!って思うんだけど、アミの中では申し訳なさの方がぶっちゃけ勝ってた。

―― てか、一人であのバケモノの相手させるって、鬼すぎるでしょ!

 ごじょーさとるを渋谷で1人にしたごじょーさとるの施設の大人たちにアミは腹が立った。

――あのバケモノを退治出来なかったら、ごじょーさとるもなんか“セッカン”されるわけ?

 バケモノが退治に失敗したら施設の大人から“セッカン”をうけるのはアミの所では当たり前だった。

――アミは何もなかったけどさ…

 バケモノ退治に失敗しても、アミは叱られる事はあっても“セッカン”を受けたりはしなかった。

 アミは大人から暴力を受けると、まあまあ重めのケガをする。それに食事の管理もちゃんとしてくれないと体調不良で寝込んじゃう。

 そうすると治療してる間、アミはバケモノ退治に行けなくて使い物にならなくなるから、それは大人たちも困るみたいで、だからアミが失敗してもアミに対して何かしてくることは無くなった。

 ただアミの代わり、他の子たちが“セッカン”を多く受けるようになった。

 アミはそれが凄く嫌だったから、絶対に失敗しないように頑張ってた。
 今のアミならあのドラマみたいセリフもドヤ顔で言える。「アミ、失敗しないもん!」ってね。
 
――ごじょーさとるも、あの渋声のオジサンに“セッカン”されるのかな?

 クソ生意気なぷちごじょーさとるは、施設に帰るとどんな感じなんだろう。
 泣いたりとかしちゃうのかな? ……あんまり想像つかないけど。

 アミの施設の大人みたいに気まぐれボコボコにしてくるヤツがいなきゃいいけど。
 
 ぐっすり眠ってた天使ごじょーさとるを思い出して、アミは胸が痛んだ。

――いやいや、だから、アミには関係ないんだってば!! 関係ない!!

 アミは胸の痛さを誤魔化すようにその場にしゃがみ込んで膝を抱える。

「あー、もう、めんどいってば…」

 蹲りながら愚痴る。

――『……アミ。約束してやるよ。お前が利用されないように俺がちゃんと言ってやる』

 頭の中で夕焼けの中、まっすぐアミを見てそう言ったごじょーさとるを思い出す。

「……」

 アミはゆっくり立ちあがって、ミドリちゃんを取り出した。
 ミドリちゃんをかけて、ずっと見ないようにしてた夜空を見上げる。

 そこには相変わらず気持ち悪い真っ白なバケモノが雲の中でうごめいてた。
 そんでさっき見た時よりも雲が“落ちてきてる”気がする。
 
――仕方ないなぁ…
 
 バケモノ退治なんて、面倒だし、シンドイし、キモくて、メチャクッチャ嫌だけど。

 でもアミと同じ境遇のちびっ子に何かあった方がアミは辛い。
 ほら、アミ、やさしーからね!

――アミはごじょーさとるより、お姉さんだからね! 先輩の実力って奴を見せてあげるよ。まあ、勝てない的には逃げましょーだけど!!

 アミは拳を握りしめて、決意を固めた。――と、意気込んだアミはある事に気が付いちゃった。

――あのバケモノ、どうやって倒したらいいの?

 空を飛んでるバケモノはパッと見て、100〜150m位の高さを飛んでるように見える。

 アミの持ってる武器はエアガンで、一番飛距離があるのだとスナイパーライフルがある。
 改造されてるから飛距離は100mくらいあるんだけど、重力があるから真上に撃っても多分60m、よくて80mくらいしかいかないと思う。

 簡単にいうとバケモノまで届く攻撃方法がアミには無かった。

――えっ、ダルッ! どうしよ!

 バケモノを見上げながら、アミはごじょーさとるを助けるって決意がちょこっとゆらぎ始めてた。
 


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